高千穂遙とヲタク文化

中学の頃、初めて自分の小遣いで、何なら親の目を盗んで、特定の作者の出版物を刊行待ちしたのが高千穂遙先生だった。

クラッシャージョウから入り、(出会った時には『暗黒邪神教の洞窟』までが既刊だったような)ダーティーペア、運び屋サムと、新刊が出れば買っていた。

僕の中では高千穂先生は安彦良和とタッグを組み、ハインラインの『宇宙の戦士』テイストをいち早く取り入れ、ガンダムに連なる当時の日本SFの急先鋒だった。

勿論、サンリオSF文庫や早川文庫から押し寄せていたディレイニーゼラズニイ、ディック、スタージョンと言った海外ニューウェーブに比べると、ハミルトンやアシモフなどオールドスクールなスパオペ寄りだったし、そういう意味で当時の僕のバイブルはベスター『虎よ!虎よ!』だったけど、背伸びをせずに、ただただ快楽のために読む娯楽作品としては、高千穂は常に最高だった。

今、大人になって思い返すと、ずっと後の『沈黙の覇王』シリーズに至るまで一作のハズレも無いというのは、本当に凄い事だと思う。

あの当時、日本のSF者を牽引していたのは確かに吾妻ひでお高千穂遙サンリオSF文庫だった。(僕調べ)

まだヲタクという言葉は無く、吾妻ひでおとり・みきが『SFの者』、『SF者』と呼んでいたサブカル好きでマニアックな層の生成期、間違いなくスタープレーヤーの1人が高千穂遙先生だった。